| 参道には当然のように屋台があふれている。 その屋台や、街灯などに合わせて星の飾りがつけられているのは、七夕を意識してのことだろう。 ちなみに神追祭では、たとえば酉の市やほおずき市のように“これ”といった縁起物や売り物があるわけではない。 “神追の儀”そのものが祭であり、山車や屋台は賑やかしと言ってもいい。 だがやはり、祭はその賑やかしを楽しむものでもあるのだろうと、この人出を見れば納得もする。 アマツ(小:「ほわわわわ〜〜、賑やかでしゅ〜〜、お人がたくさんでしゅ〜〜」 にしき:「今年も盛況みたいね。夜になったら、もっと賑わうわよ」 カナデ(小:「エレン殿エレン殿っ、あれはなんでござりまするのですのますか!? あちらは? あぁ、あちらはっぴょ!?」 エレン:「……知らない。来たのはじめて」 野乃子:「え? は、初めてなんですか? 瀬部さんは、最近引っ越してきた、とか?」 エレン:「中学からこっち」 にしき:「あぁ、そうだったの。でも、瀬部は体弱いものね。こういう人混みは疲れるでしょう? 辛くなったら、すぐに言うのよ?」 エレン:「ん」 野乃子:「……そういえば、桐さんって瀬部さんだけ呼び捨てですよね?」 にしき:「だけ、っていうことはないわよ。中学のときの同級生は、だいたい呼び捨てじゃないかしら」 野乃子:「なるほど……あの、あたしのことも呼び捨てでかまいませんから」 にしき:「そっくりそのまま返すわよ、諸音」 野乃子:「あ、あたしは、その……呼び捨てとか苦手なので……あはは」 にしき:「別にいいけどね……ついでに、あなたも呼び捨てさせてもらっていいかしらね、朝香?」 真名:「いいよ。じゃああたしは……にしき、だから……にーちゃん?」 にしき:「なんであなたの兄にならないといけないのよ!」 真名:「なはははは、だってにしきさんがそういう名前だからー」 にしき:「別になんでもかんでも略さなくったっていいでしょうが。あなただって別に、まーちゃんとか呼ばれたくないでしょ?」 真名:「まーちゃん……ツッコミどころのない、寂しいあだ名ですな」 にしき:「……呼ばれたくないなら呼ばれたくない、とはっきり言いなさいよね」 野乃子:「あ、あはは……」 シズク(小:「ところで真名様ぁん、姫様はまだお隠れになっていらっしゃいますのーん?」 真名:「んー? んー……まぁ、ただ単に隠れてるとか、謹慎させてるってわけでもないんだよね」 にしき:「そうなの?」 真名:「ここのところ、お祭りの準備で御山の方もてんてこ舞いだったみたいで……姫ちゃんも、あれやこれやと駆けずり回ってたみたい」 真名:「それで疲れちゃったみたいで、今は寝てる。夕方くらいには起きるんじゃないかなと思うよ」 エレン:「……神様が疲れる?」 真名:「しずちゃんたちと違って、あたしの中にいる姫ちゃんは、なんというか分身みたいなものなんだって」 真名:「半分はまだ御山にいて、お祭りに乗じて騒ぎ出す“あやかし”とかを抑えたりとか、他の地からおいでになる神様たちのお相手とか……」 シズク(小:「あ、あらーん」 アマツ(小:「きゅ? なんでしゅか? なにかありましたでしゅか?」 カナデ(小:「主主っ、お祭りですぴよ、楽しみますぴよ〜っ!」 真名:「……と、この子たちがやる仕事の分も、姫ちゃんと他の近侍さんたちが走り回ってるとかなんとか」 真名:「ここのとこ、毎晩御山からの使いの人が来ては、あれやこれやと指示したり対策を練ったりしてたよ」 にしき:「……アマツ。あなた、自分の仕事もあったのに」 アマツ(小:「きゅ……?」 エレン:「むー」 カナデ(小:「おやエレンどの。小難しいお顔をされましまして、どうかしましたですピヨか?」 野乃子:「う、う〜ん」 シズク(小:「にしき様ぁ、エレン様ぁ〜ん。アーちゃんとカナちゃんは、まだ新米だから、勘弁してあげて欲しいのねーん」 野乃子:「まぁ、あたしたちが怒ることでもないでしょうし……」 にしき:「ふむ……姫神様だって、そんなこと分かっててアマツたちをここにいさせてるんでしょうしね。いいんじゃないの。みんなはお祭りを楽しめば」 エレン:「いい神様……」 真名:「うん。あたしもそう思うよ。姫ちゃんが頑張って、みんなが楽しめるようにしてくれてるんだもん。みんなの仕事は、お祭りを楽しむことだよ」 アマツ(小:「なんと、ななんと! 姫しゃまー! アマツは、アマツは一生お側におりましゅでしゅーー!」 カナデ(小:「一生お祭りを楽しむですますピヨー!」 シズク(小:「んふふ〜〜。これも姫様のご寵愛……シズクは、しかとそのお返しをさせていただく所存ですわ〜ん」 真名:「うん。それじゃ、みんなで屋台の食べ物全制覇しよーう!」 アマツ(小:「はふんはふんっ! にしきしゃま、お体をお貸しくださいませ〜〜!」 カナデ(小:「焼き鳥はっ、焼き鳥だけはご勘弁をなのですますーー!」 シズク(小:「あはーん。あの綿菓子って、シズクの体みたいですのねーん。シズクの体も、とーっても甘いですわーん」 真名:「なはははは! よきにはからえ、よきにはからえ〜〜!」 |